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高校受験の基礎知識

高校受験は多くの中学生が通過する人生の大きな節目です。
ところが、仕組みについては漠然としか知らないという受験生も多いのではないでしょうか。
多様な進路の選択肢がある上に、進路の中でもっとも一般的な高校にたくさんの種別があるからです。
このコーナーでは、そんな中学校卒業以後の進路についての基礎知識をおさらいします。


中学卒業後の進路

小学校・中学校までと、それ以降の進路の大きな違いは、学ぶ内容がおおよそ全員共通の義務教育に対して中学校卒業以降は、進路も多様にわかれ、学ぶ内容も学校や学科ごとに異なるところです。
何を学ぶのかは、将来の夢やどのような能力を身につけたいのかという、みなさんの判断に委ねられているのです。
大学や専修学校の専門課程(以下、専門学校)に進学して、より高度な学びを目指すのであれば、高等学校を選ぶのが一般的です。
しかし、大学進学のルートはそれだけではありません。高等専門学校(以下、高専)を卒業すると短期大学修了と同じ準学士となり、大学3年次(2年次)への編入試験を受験する資格が得られます。
また、高校に進学しなくても、あるいは途中で退学したとしても「高等学校卒業程度認定試験」(旧大検)を受験し、一定の成績をクリアすれば、高校卒業と同じ学力があると認められ、大学受験の資格が得られます。

国民の大半が進学する
「準義務教育」

日本では、中学校を卒業した人のほとんどが高校・高専に進学しています。
約98パーセンを超えており、全員とも言える高い進学率のため「準義務教育」と呼ばれることもあります。
実際、先進国の中には高校を義務教育にしている国もあるほどです。
そのため日本でも国公立高校の授業料無償化や私立高校の授業料支援などが充実され、基本的に国民が受けるべき教育という位置づけになっています。

さまざまな高等学校の種類

公立・私立・国立・株式会社立

高校には、府や県や市が設置している公立高校、学校法人などが設置する私立高校、国が設置主体である国立の他、株式会社が設置して運営する高校もあります。
公立高校は、一般に通学区域が定められていて、他府県の高校は原則として受験できません。国立高校も通学区域が定められていますが、こちらは府県を跨いで通学区域が指定されている場合もあります。
私立高校は、教育への理念を持った私人が設立した学校で、各校独自の教育目標を持っています。通学区域の制限はなく、自由に出願することができます。ただし、他府県の私立高校に通学する場合は、自治体による授業料支援を受けられない場合があるので、注意が必要です。

学年制・単位制

高校は中学校と違い、一定の成績を満たさなければ卒業が認められません。
「高校卒業」を認める方法には、大きく分けて「学年制」と「単位制」の2つの制度があります。
学年制では、学年ごとに決められたカリキュラムを修了することで次の学年に進級し、それを3 年分繰り返すことで卒業が認められる方法です。
単位制は、学年にはこだわらず、74単位以上(各校が定める)の「単位」を取得すれば卒業が認められる方法です。1単位は、50分×35回の授業に相当します(多くの場合、単位の認定には試験やレポートも課されます)。

全日制・多部制・通信制

高校は、授業の開始時刻や通学の仕方によって「全日制」「多部制(定時制)」「通信制」にわけられます。
全日制は、中学校までとほぼ同様に、朝に授業が始まり、夕方に授業やクラブ活動を終える学校のことで、多くの学校はこの種別に入ります。
多部制は、一日をいくつかの「部」に分けて授業の時間とする学校です。3年間での卒業を目指す3修制では1日6時間授業、4年間での卒業を目指す4修制では1日4時間授業など、個人の事情に合わせた通学スタイルが選べます。
通信制は、名前の通り、自宅に居ながら授業を受ける学校のことです。通学することが全くないわけではなく「スクーリング」と呼ばれる面接指導ではもちろん、行事などで登校することもあり、新しい形のスクールライフとして近年学校数も増加し、生徒数も増えています。

専門学科

高校には、さまざまな専門学科が設けられていて、それぞれで学ぶ内容に特徴があります。
普通科は、基本的に進学のための学習内容となっています。
商業科・工業科・看護科などの専門学科は、それぞれの専門的な職業に必要とされる内容を学ぶことになります。
職業的専門学科だからといって大学などへの進学ができないわけではありません。
国際科や英語科、理数科などの学科は、大学への進学を想定しつつ、それぞれの分野に特化したより高度な学びを行う専門学科です。
混同しやすいのが「総合学科」と「普通科総合選択制」です。前者は専門学科の一つで、普通教育と専門教育の両方を総合的に行う学校のことで、後者は普通科でありながら選択科目を充実させた学校という種別になります。
目指している教育内容はよく似ていますが、総合学科と普通科総合選択制では入試日程や通学区域が異なるなど、入試での扱いが違う場合もあります。よく注意してください。

高等専門学校

高等専門学校(高専)は5年制の学校で、主に工学・技術・商船系の専門教育を行います。
4年目からは、大学レベルの高度な授業となります。むしろ、教養的な内容である大学1・2年生よりもより専門的な授業のこともあります。高専を卒業すると、短期大学卒業と同様の「準学士」が授与されます。

専修学校(高等課程)

専修学校(高等課程)は、高等専修学校ともよばれ、仕事に役立つ実践的な職業訓練・技術と社会で必要な教養を習得できるのが大きな特徴です。将来何をしたいのかが決まっていて、早く社会に出たい生徒には高等専修学校も進路選択の一つになります。

入学試験について

入試日程

2026年度の関西圏の高校入試は、1月31日の和歌山県私立から始まり、2 月2・3 日の滋賀県私立、2 月6 日奈良県私立、2月10日の大阪府・兵庫県・京都府の私立で1 次入試が実施されます。 1 次入試の合格発表から公立入試(2026年度一般選抜予定、京都府前期2 月17・18 日、滋賀県2月25 日・26日、奈良県3月4日、京都府中期3月7日、和歌山県3月10日大阪府3 月11日、兵庫県3月12日)までの間に私立の1.5次入試が行われます。実施しない学校もあります。
公立の合格発表後に、私立の2 次入試が行われます。こちらも実施しない学校もあります。

専願と併願

多くの私立高校では、専願か併願かを明らかにして出願することが求められ

ます。
専願とは、合格すれば必ず入学することを約束して受験することです。
併願とは、合格してもそれを保留して、公立高校入試の結果を待ってから入学を決めることができる受験の仕方です。
公立高校を第一志望として私立高校を受験する場合には併願を選ぶことになります。
ほとんどの場合、専願の受験生は併願より合格ラインを低く設定され、有利に判定されます。

推薦

多くの学校で推薦による選抜を実施しています。出願資格は、専願受験者であること、学校ごとに決められた基準をクリアしていること、そして中学校からの推薦があることです。

高校無償化制度について
~公的就学支援制度~

高校は義務教育と違って、公立でも入学金や授業料が必要です。進学率は98.7%(2023年度)となっており、ほぼ全ての生徒が高校へ進学している状況です。家庭での教育費の負担軽減のため2010年から高校授業料の無償化が始まりました。当初は国公立高校の授業料分でしたが、2020年より私立高校にも加算され実質無償化となりました。
この特集では、国(文部科学省)の支援制度と、自治体独自の制度を紹介します。

 

国の支援制度「高等学校等就学支援金制度」

「高等学校等就学支援金制度」は、一定の要件を満たす家庭の高校生等に対して授業料が給付される国の支援制度です。国内に住んでいる高等学校、特別支援学校の高等部、高等専門学校、専修学校などに通う生徒で、一定の世帯年収額を超えると支給されません。
私立高校(全日制)通学を例に説明します。※下記図・表参照

支援の対象になる世帯の年収目安(私立高校全日制の場合)
子の人数 118,800円支給 396,000円支給
両親のうち一方が働いている場合 子2人(高校生・高校生) ~約950万円 ~約640万円
子2人(大学生・高校生) ~約960万円 ~約650万円
両親共働きの場合 子2人(高校生・中学生以下) ~約1,030万円 ~約660万円
子2人(高校生・高校生) ~約1,070万円 ~約720万円
子2人(大学生・高校生) ~約1,090万円 ~約740万円

補助される授業料には所得により上限があります。
世帯年収910万円までは118,800円(公立高校授業料同等)、510万円までは396,000円(私立高校授業料平均)が支給されます。世帯年収は目安であり、家族構成によっても異なりますので判定基準に基づいた計算が必要です。

その他の就学支援制度

「高等学校等就学支援金制度」は、授業料を支援する制度です。授業料以外の支援制度には下記があります。

●高等学校等就学支援金制度(家計急変支援)

保護者等の負傷・疾病による療養のため勤務できないこと、その他自己の責めに帰することのできない理由による離職など、従前得ていた収入を得ることができない場合に授業料を支援する制度です。

●高校生等奨学給付金制度

授業料以外の教育費負担を軽減するために低所得者世帯を対象に「奨学給付金制度」があります。「給付」なので返済の必要がありません。
※授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費、通信費等になります。

●家計急変への支援制度

保護者の失職、倒産などの家計急変により収入が激減し、低所得となった世帯に対し、収入の変動が就学支援金の支給額に反映されるまでの間、就学支援金と同等の支援を行う制度です。

自治体独自の就学支援加算制度

国の制度に加算して各自治体では独自の就学支援制度を行っています。ここでは関西の自治体の制度を紹介します。最新情報や詳細については自治体や教育委員会のホームページでご確認ください。※図内の濃い網掛けの部分が自治体独自の制度

●大阪府

2024年度から段階的(年度毎)に導入された高校授業料の完全無償化制度は、2026年度より全学年で所得や子どもの人数制限無しで完全無償化となります。
対象は、生徒・保護者がともに大阪府内に在住し、「就学支援推進校」の指定を受けた大阪府内の私立高校に在学が条件です。

●兵庫県

保護者等全員が兵庫県内に在住し、兵庫県内または近隣府県の全日制私立高校に在学の場合「授業料軽減補助」を行っています。
年収目安590万円未満には44,000円(年額)、590万円~730万円未満には120,000円(年額)、730万円~910万円未満には60,000円(年額)が、授業料として補助され、多子世帯 (23歳未満の扶養する子どもが3人以上)には補助額に年1万円が加算されます。
近隣の私立高校に在学の場合は補助額の1/2(京都)または1/4(大阪・滋賀・奈良・和歌山)で補助されます。※下記図参照

●京都府

保護者、生徒とも世帯の住所が京都府内であり、京都府認可の私立高校に在籍している場合、府独自の「あんしん修学支援制度」による補助金を上乗せします。
生活保護世帯は年間最大980,000円、年収目安590万円未満は年間最大650,000円、590~730万円未満は年間最大264,000円、730~910万円未満は年間最大で198,800円を補助。この制度は、授業料以外の施設設備費なども支援の対象になります。同時在学加算として、兄弟姉妹が京都府内私立高校(全日制)に通っている場合、132,000円(730万円未満)、65,200円(910万円未満)が加算、府内公立高校の場合は1/2の金額が加算されます。※下記図参照

●滋賀県

保護者等が滋賀県内に在住し滋賀県内の私立全日制高校に在学の場合、県独自の授業料補助金を上乗せします。
年収目安590~910万円未満の世帯に対し、授業料補助金59,400円(年額)を上乗せします。また、590~910万円未満の多子世帯(23歳未満の扶養する子どもが3人以上)に対しては授業料補助金がさらに59,400円(年額)加算され、合計118,800円が補助されます。※下記図参照

●奈良県

保護者等(親権者)が奈良県内に住所を有し、県内の指定の私立高等学校等に在学している場合、県独自の「授業料等軽減補助金」を国の就学支援金に上乗せする制度があります。
支援額は、世帯収入590万円未満の世帯が234,000円(年額上限)、590万円~910万円未満の世帯が511,200円(年額上限)、国との合計最大630,000円が補助されます。授業料に加えて施設整備費等も補助の対象となります。また、世帯収入910万円以上の多子世帯(23歳未満の子を3人以上)には、最大59,400円が支援されます。※下記図参照

いくら支給要件を満たしていても、申請しないと支給されません。就学支援金を受け取るためには申請が必要です。提出された書類をもとに、自治体が受給資格の認定を行います。
就学支援金は、学校が生徒本人に代わって受け取り、授業料に充てます。受給資格が認定されるまでは、私立高校に一旦授業料を支払う場合が一般的です。審査が終わり、受給が決まった後、すでに支払った授業料が返金されますが、時期や方法は学校によって異なります。
また、公的支援と違って、私立高校には、独自の特待生制度や奨学金制度を設けている高校もあります。本書「学校インフォメーション」各校の「奨学金・特待制度」をご確認ください。

※国及び自治体の支援制度は2025年5月末現在のものです。2025年度~2026年度は変更となる予定です。最新情報は、文部科学省・各府県教育委員会等のホームページでご確認ください。

大学無償化(高等教育の修学支援制度)について

国(文部科学省)では、授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金により、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化する制度として「高等教育の修学支援新制度」を2020年4月に開始しています。
支援要件として、世帯収入や資産の要件を満たしていることと、進学先で学ぶ意欲がある学生であることになっています。※下記図・表参照

授業料等 減免額 私立学校 国公立学校
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 260,000円 700,000円 280,000円 540,000円
短期大学 280,000円 600,000円 170,000円 390,000円

(第Ⅰ区分年額)

2025年度より、大学等への進学後、学生等の十分な学修状況を見極める観点から、学修意欲とともに、学修成果についても一定の要件(学業要件)が厳しくなり、支援について警告や廃止となる場合があります。

奨学金 自宅通学 自宅外通学
私立 460,000円 910,000円
国公立 350,000円 800,000円

(第Ⅰ区分年額)

学業要件 警告(支援継続) 廃止(打切り)
出席率(半期欠席回数) 8割以下(3回以上) 6割以下(6回以上)
取得単位
(124単位の場合) 1年生 21単位以下 18単位以下
2年生 43単位以下 37単位以下
3年生 65単位以下 55単位以下
4年生 86単位以下 74単位以下
その他の要件 GPA下位1/4内 警告要件連続2回

大学(学部)進学率は57.5%(2023年度)と過去最高となりました。大学進学率が上昇する一方で家計における学費負担も問題視されています。
大学(昼間部)生の奨学金受給率は55%と、年々増加傾向にあります。奨学金は卒業後の返済負担が重くのしかかります。受給しない場合はアルバイト等で学費を補わなくてはならず、それらの負担から大学進学しない学生もいます。
この問題を解決するために導入されることになったのが、大学無償化制度です。大学無償化制度は今後も改定されていくと考えられますので、最新情報を常にチェックしましょう。

※支援制度は2025年5月末現在のものです。
最新情報は、文部科学省のホームページでご確認ください。